2001年3月頃の話です
どこから見ても少年にしか見えない女流棋士、それがこの春プロ入りする進藤ヒカルだった。
「やっぱり紹介ページに男女の区別を書いた方がいいんじゃないですか?」
「そりゃ、かえって進藤クンに失礼だろ」
「そう思うんなら何故『クン』付けなんですか?」
日本棋院の職員二人は溜息を付いた。彼らはこの年度末の日本棋院公式ホームページ更新作業に追われている。
「そうだ、彼女はまだ中学生だから、生徒手帳を本人から借りて、制服姿の写真をコピーざせてもらいましょう!」
「え、でも新初段シリーズの写真で準備してたんだけど!?」
「だってあの写真じゃ女の子って、誰も判りませんよ〜(汗)」
「うーん…」
「女流棋士会長の女史も、『進藤さんの紹介ページはせめて可愛く写っているのにしてあげましょうね』ておっしゃってましたし」
「そうか…あの先生が…仕方ない。借りよう、生徒手帳」
しかし3月ともなれば学年末、ヒカルの生徒手帳はどういう使い方をしてきたのか既にボロボロで、その写真も到底使えそうにはなかった。
「なんだ〜オレの生徒手帳、写真が欲しかったの?」
「うん、女流棋士会長の先生が、棋院ホームページに載せる進藤クンの紹介写真は、ぜひ制服姿で、ておっしゃられてね」
「棋院に制服着て来てくれれば撮影できるんだけど」
「えー休みなのにオレ制服着たくないよ〜似合わねえし」
「そういや春休みだもんね」
「…そだ、3年の生徒手帳ならこれからだし、それじゃダメ?オレ、それならヨレヨレになる前に持ってくるよ」
「いつくらいになるの」
「4月の半ばかなぁ…」
「ん〜、じゃあ、それまで仮の写真にしとくよ。生徒手帳でき上がったら持って来てくれる?」
「OK、じゃ、そゆことで」
某アニメ番組主人公の5才児の台詞をマネして、ヒカルは事務所を後にした。
その後ろ姿が見えなくなると、職員はまた溜息を漏らした。
「制服姿でも、性別判らなかったらどうしましょう…」
彼女のあまりにコドモっぽい言動に、彼は言わずには居れなかった。
「大丈夫だ、彼女の中学校…葉瀬中はセーラー服だ。誰が見ても女の子だって判るだろう」
「判るといいですね」
「本当だな…」
こうして、進藤ヒカルの紹介ページの画像は、しばらく男の子のような格好の写真が使用されることになった。そのためか彼女の事を男の子だと思い込む囲碁関係者が続出し、囲碁界に様々な騒ぎが起きることになるのだが、それはもう少し先の話である…。
水菜のコメント
日本棋院公式ホームページの更新作業は棋院職員の有志の人?それとも外部に委託?
|
|